TIFF TOKYO INTERNATIONAL FILM FESTIVAL 第25回東京国際映画祭 2012.10.20-28 www.tiff-jp.net

TIFFガイドブック

部門の紹介

自主企画

我々が映画を観て共感し、反発し、感情を揺さぶられるのは、自分と同じ人間であるスクリーン上の人物の行動に対してです。そして、その人物の行動の背景が時代的必然性を帯びていることで、我々が覚える感情は深みを増します。さらに、その表現方法が個性的であればあるほど、感情が揺さぶられた記憶は、単なる娯楽や逃避の域を超え、芸術的感動として心と体に刻まれていくでしょう。
つまり、人間とは何であるかを徹底的に考え抜いていること、そこに今という時代が刻印されていること、そして、その現代性を芸術に昇華させる作家の個性が発揮されていること、この3点が見事に今年のコンペティションの15本に共通していることです。
特異な状況、あるいは特異になれない平凡な状況に置かれた主人公が、そこから脱しようともがいて奮闘する。郊外のドライブインでくすぶるトルコの少女の憂鬱や、上昇志向が強いが故に悪妻扱いされてしまう中国の女性の苦難や、自分が乗った船がハイジャックされてしまうデンマークの料理人の苦闘の背景には、世界経済の動向が多分に影響しているかもしれない。離婚した両親の間を行き来させられるアメリカの幼女の不幸や、死んだと思っていた母が突然現れる韓国の少年の困惑の背景には、現代家族の機能不全という傾向が影響しているに違いない。
2012 年という時代にふさわしいテーマと人物像を携えて、それを普遍的な「映画」として成立させる戦いに勝利し、自らの作家性をいかんなく発揮した15本の監督たちを、今年のコンペティションは祝福します。

第25回東京国際映画祭 コンペティション プログラミング・ディレクター

矢田部吉彦

特別招待作品は、今後公開される話題作をいち早く紹介する部門です。今年は、公式オープニング作品に、ジェームズ・キャメロン制作、アンドリュー・アダムソン監督の『シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語』を上映します。この作品は、世界的に有名なシルク・ドゥ・ソレイユの代表的な演目を織り込んだ、3D映画の新次元を切り開いた作品で、ワールド・プレミアでの上映となります。
また、今年も特別オープニング作品を上映します。作品は、『JAPAN IN A DAY [ジャパン イン ア デイ]』。今年の3月11日に収録された投稿映像を1本の映画にまとめあげた作品ですが、まさに、復興への道のりとしての今が息づく、東京から世界へ発信すべき意義のある作品です。そして、公式クロージング作品は、クリント・イーストウッド主演の『人生の特等席』。人生の黄昏を迎えた野球のベテランスカウトが仲違いしていた娘と共に最後のスカウト活動の旅に出る――、実に味わい深い、素晴らしい作品です。今年は、25回という記念すべき年であり、様々なタイプの作品を選定することを心がけました。これら多彩な作品群を、ぜひご堪能ください。

第25回東京国際映画祭 特別招待作品 プログラミング・ディレクター

都島信成

アジアの風

「アジアの風」部門の合言葉は“より広く! より深く!”――このキャッチフレーズを掲げて6年目になります。今年もまた、ご近所の東アジアから遥かな中東・中央アジアまで、広大な地域から多くの秀作が揃いました。最優秀アジア映画賞に輝くのはどの作品でしょう。いま、アジア映画の勢いはとどまるところを知りません。韓国、中国、台湾、インド、トルコなどを中心に、製作本数は右肩上がりとなり、名だたる国際映画祭での受賞ももはや特別なことではありません。こうした活況を踏まえ、今年の「アジアの風」では、新作のパノラマに加えて、注目すべき作家・作品を輩出するインドネシア映画の現在進行形と、1960年代に一世を風靡した幻のカンボジア・ホラーの発掘という、東南アジア映画の現在と過去に光を当てるふたつの特集を実施します。ご期待ください。なお、これまでの「アジアの風」出品作を含め多くのアジア映画が網羅された書籍「アジア映画の森――新世紀の映画地図」(作品社)が刊行されました。「アジアの風」の絶好のガイドブックとしてご利用ください。

第25回東京国際映画祭 アジアの風 プログラミング・ディレクター

石坂健治

“ご近所”の韓国・中国から遥かな中東まで、広大な地域に爽やかな映画の風が吹きわたる。最優秀アジア映画賞は誰の手に!?

今世紀に入り年間製作100本を超える活況を呈するインドネシア映画界を牽引する3人の作家(ヌグロホ、エドウィン、リザ)をクローズアップ!シンポジウムを併催。 特別協力:国際交流基金

ポル・ポト政権以前の1960 年代、カンボジアは東南アジア全域に配給網を持つ一大ホラー王国だった!甦る幻の傑作が知られざるアジア映画史へと誘う。

今年の日本映画の上映作品選定は、例年を大きく上回る力強い作品の数々に、目眩を覚えつつも嬉しい悲鳴とともに幕を開けました。
1990年代後半以降、日本の映画産業全体における日本映画の活況ぶりは目覚ましいものがあります。一方で、日本映画も、大作とインディペンデント作品に大きく二極化していることを肌で感じている方も多いのではないでしょうか。なかでもインディペンデント作品は、映画のデジタル化とともに自宅のPCで作品を完成することさえ可能となったいま、さらなる広がりをみせると期待されています。
「日本映画・ある視点」は、このようなインディペンデント作品を積極的に応援し、個性的な才能を発掘するとともに、国内外へ広く紹介することを目的とした部門です。
今回のプログラムでは、つわもの作家が独自のフィールドで手がけた奥行きある作品、若手作家が多くの力添えを得て作り上げた瑞々しい作品など、短編・中編・ドキュメンタリーを含め、映画制作の喜びに満ちた作品の数々を上映いたします。
日本発のインディペンデント作品発見の幸福を、ぜひ東京で体感して下さい。

今年のロッテルダム、ベルリン、カンヌ、ヴェネチア、トロントなどの国際映画祭で話題になった作品や、有名監督の新作で、原則として日本公開が2012 年8 月末現在で決定していない欧米の作品を集めたのがこの部門です。各映画祭の受賞作品や、個性派監督の問題作、巨匠監督によるドキュメンタリーなど、コアな映画ファンであれば見逃せない作品が揃っています。2012 年の世界の映画の潮流を、リアルタイムで堪能して下さい。

今年のnatural TIFF 部門は、従来の主軸であるテーマ「自然との共生」に加え、環境問題の過酷な現実にさらなる焦点を当てています。地球上における自然環境は、natural TIFF 部門が創立された5 年前よりも悪化し、環境問題はさらに深刻化していると映像は訴えます。地球温暖化によって美しい南の島が沈んでいく危機を目の当たりにし、世界規模で発生しているゴミ問題は地球の寿命を大幅に縮めているという現実を私たちに容赦なくつきつけます。しかし一方で、環境問題を見つめるたびに実感するのは、地球の美しい自然、人類が育んできた文化、そして共存している生物たちの豊かさです。イタリアの羊飼いが自然と動物と共存する素晴らしさに、スイスの山々で木霊するヨーデルの透き通った音色の美しさに、何度も感動するのです。地球が私たちに与えてくれる奇跡のために東京国際映画祭が映像を通じて伝えたいのは、環境問題と真剣に向き合い、地球と人類が育んだ尊い文化を愛することです。節目となる5 回目を迎えた今年は、自然と人類と環境問題をテーマにした地球愛に溢れる力強いドキュメンタリー8 作品をご紹介します。

香港映画界を代表するプロデューサー、レイモンド・チョウ氏の功績を称え映画祭は今年特別感謝賞を授与します。これを記念して氏が製作した3作品をオールナイト上映。80年代を沸かせたジャッキーとキョンシーの大活躍をスクリーンで今再び!

ハリウッドでもっとも才能に溢れた影響力のある映画製作者の一人、ロジャー・コーマン氏が、今年の審査委員長を務めることになりました。60年近くのキャリアの中で550以上の作品を製作し、50以上の作品を監督した彼の作品の中から、珠玉の3作品をオールナイト上映いたします。

日本橋にゆかりのあるクラシックスをはじめ、「日本人」のさまざまなあり方を見つめる新作ドキュメンタリー、日本人の姿を追求した新藤兼人監督の名作、さらにはひとりの日本人の人生の終え方を追ってヒットを記録した近年の話題作を上映する3 日間。日本橋で日本人の心に迫ります。

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